欲しい物
「何か欲しい物、ある?」
数年前の10月の中頃に、同じ部活の女の子(パートリーダー)からメールでこう尋ねられた。
「特に無いけど。どうして?」
「もう過ぎちゃったけど、誕プレをあげようかなと思って」
どうやら、誕生日(私の誕生日は10月のはじめの方)を祝ってくれるらしい。
私は冗談のつもりで、
「……強いていうなら、愛が欲しいかな(笑)」
と送った。いや、最後の(笑)は送ってない。
そしたら、なんか付き合うことになってしまった。
びっくり。
その子に全然興味なかったけど。
でも、その子のテンションがすごく上がってたから、悪い気はしなかった。
私の今までの人生で、こんなにも人に喜ばれたことがなかったからね。
そして迎えた最初の彼女の誕生日。
私は何もしなかった。
そして迎えた最初のクリスマス。
☃
紫色が好きだった彼女は、私に紫色のマフラーをくれた。
私は何もあげなかった。
その子にあんまり興味なかったから。
そして迎えた最初のバレンタインデー。
彼女は手作りのお菓子を作ってくれた。
そして迎えた最初のホワイトデー。
何をしたかは覚えてない。
いつからか彼女は私と二人きりになるのを避けるようになっていた。
もちろん練習に支障がでてしまう。
4月頃には、部活にもあまり来なくなっていた。
そしていつのまにか部活をやめていた。
私たちのバンドは、唯一の戦力ともいえる存在を失った。
いつのまにか私がパートリーダーになっていた。
残された私たちは、彼女が抜けた分の穴を埋めるのに必死だった。
でも全然埋められなかった。
その穴はあまりにも大きくて。
そして迎えた支部大会(全国大会の前の大会)本番。
結局満足のいく演奏ができないまま、私たちの最後の夏は終わった。
僅差だった。
もしも彼女が部活をやめていなかったら?
もしも私と彼女の関係が良好だったら?
まとめ
彼女には誕生日プレゼントをあげよう。
さもなければ毎年12月9日という日付を見てもやもやした気分になるかもしれない。